おすすめの着物保管方法

長い間しまいっぱなしにしていた着物。久しぶりに出してみると『カビ臭い!』

そんな経験はございませんか?

この記事では、カビの性質からカビを生やさないようにする保管方法、

カビが生えてしまった際の対処方法までを解説いたします。

カビチーズ
カビの生えたチーズの写真

着物に生えるカビの性質について

新品の着物であっても、『湿度』『温度』『栄養』の条件が揃うとカビは生えてしまいます。

これまでも、新品で仕立て上げられた着物が、半年程でカビだらけになってしまったという事例もありました。

カビの発生には、特に、保管中の『湿度』が大きな影響をもたらします。

カビは湿度が60%以上になると発生しやすくなり、70%を超えると急速に成長します。

この湿度に加え、25℃を超え暖かくなる時期には更に注意が必要です。

日本の気候で特に注意すべき時期は、梅雨の時期や台風シーズンです。

下の写真は、カビが生えた大島紬です。

真ん中よりも少し右側の折れ目は縫い跡部分です。

更に右側は仕立てた状態では見えない縫い込みの中に入る箇所です。

この事例を見ても、生地が重なり湿気が溜まりやすい部分にカビが多く発生していることがわかります。

着物カビ縫い込み
着物カビ縫い込みの中

カビを生やさないようにする保管方法とは

それでは、着物をカビから守るお勧めの保管方法についてご紹介します。

カビの性質でも触れたように、カビは高湿度を好みます。

高湿度であるほどカビは生えやすく、生息しやすくなります。

つまり、カビは低湿度では生えにくいということです。

部屋の湿気を抑え低湿度にするお勧めの方法は除湿機の使用です。

その他、エアコンの除湿機能を利用しても同様の効果が得られます。

高機能な除湿機を使用すると、雨の日などには1日で1リットル以上もの水がタンクに溜まることもあります。

着物を保管する際には是非これらを活用してみてください。

ホームセンターなどで販売されている除湿剤でも同様の効果が期待できますが、

除湿機と比べると効果は低くなります。

また、除湿剤を利用する場合はこまめに交換する必要があります。

除湿機
高機能の除湿機
扇風機
虫干しには扇風機の使用をお勧めします

桐箪笥に入れておけば大丈夫⁉︎

上質の桐箪笥は湿気を防ぐのに大変有効的です。

桐が湿度を吸収して膨らみ、外からの湿度を入りにくくしてくれます。

しかし、当店のお客様の中には「桐箪笥で保管していたのにカビが生えた!」とご相談にみえる方も多くいらっしゃいます。

高価な桐箪笥でも高湿度の中、長期間保管されるとカビが生えることもあります。

桐箪笥に収納する場合でも、湿度管理はとても重要です。

桐箪笥
桐箪笥の着物収納

昔から言われる虫干しはするべき?

長い間着用されない着物には虫干しが必要です。

虫干しには、夏に行う土用干しと冬時期の寒干しと呼ばれる方法があります。

時期は異なりますが、どちらも高気圧に覆われた2、3日晴れた日が続いた後の天気の良い日に行ってください。

なお、直射日光は絶対に避けて着物を吊し行って下さい。

着物を染める染料は光に対して反応しやすく、色焼けの原因となるからです。

また、電気の照明も同じように当て続けると色焼けが起こる事がありますので、照明にも注意が必要です。

虫干しの場所は風通しの良い所を選びましょう。

風が通りにくい場合は合わせて扇風機を使用されることをお勧めします。

虫干しは2〜3時間でも充分効果が有ります。

収納されていた箪笥やケースなども湿気が取れるよう風を当てて乾燥させてください。

収納場所に湿気が残っていると、せっかく着物を干しても同じように収納することで効果が薄れてしまいます。

虫干し
能楽衣装の虫干し風景

着物にカビが生えてしまった際の対処方法について

着物にカビが生えてしまった場合は洗い張りをお勧めします。

カビの部分の生地を優しく摘んでみて、硬さがあるようでしたら表面だけでは無く生地の中に根を張っています。

洗い張りは大変有効ですが、通常の洗い張りだけでは完全に除去するのが難しいです。

きもの工房扇屋では次のような作業を行います。

生地に根差した部分を超音波洗浄機を使用して洗い落とします。

カビが生えた部分が変色している場合には、部分的に漂白の作業を行います。

その後、洗い張りの作業を進めていきますが、洗浄に使用する水に高濃度オゾンを混入します。

オゾンは殺菌効果が高く、同時に消臭が可能です。

軽度の表面のみのカビや、着用日が間近で洗い張りする時間がない、料金が掛けられない等の条件により、丸洗い(ドライクリーニング)をお勧めする場合もございます。

しかし、この作業は簡易的な方法です。

上の写真の大島紬のようにカビは縫い込みの中に多く発生する事が多いです。

表面のカビが綺麗になったとしても縫い込みに残留した場合後々カビが生える可能性が高いです。

保管場所も要注意!

カビが生えた着物を保管していた所には、カビの菌が存在しています。

カビの菌はホコリのように舞い、固まらない状態では見つけることが困難です。

保管していた着物にカビが生えていた場合、着物を包む畳紙や箪笥、ケースにも同じくカビが存在していると考えるべきでしょう。

カビが生えた着物と同じ環境下で、新品の着物や綺麗になった着物を保管すれば、当然それらにもすぐにカビが生えてしまいます。

収納場所を触ってみて、湿気があるようであれば乾燥させてください。

一見カビが生えていないように見える他の着物や小物類にも、同じようにカビの被害が出ていると考えられますので、収納場所の内側をアルコールなどで除菌すると良いでしょう。

箪笥であれば全ての引き出しを外し、裏面まで除菌することをおすすめします。

ここまで綺麗にしても、カビは完全に無くなるものではありません。

その後は、「カビを生やさない保管方法」のように、除湿を行い湿度管理に注意しましょう。

ベンジン、アルコール
アルコール除菌

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