【着物の金彩加工】
金彩の剥がれや黒ずみ、刺繍のほつれやかすれなど、装飾性の高いお着物のお悩みにお応えします。
きもの工房 扇屋では、国家資格「染色補正技能士」を持つ職人が、金彩や刺繍の加飾・修復を一枚ずつ丁寧に行っております。
伝統的な金彩加工には、金粉・金箔・金彩泥などさまざまな技法があり、経年や保存状態により変色や剥離が起こることも。
当工房では、染色や糊の組成、地色との調和を見極めながら、自然で美しい仕上がりを追求いたします。
さらに、金駒刺繍や縫い取り柄など、繊細な技術が施された部分も修復が可能です。
「大切な着物を子や孫の世代にも残したい」「諦めていた文様をもう一度蘇らせたい」――そんな思いに応える専門工房です。
ページ下部では、よくあるご質問もご紹介しています。
仕上がりのご不安やご予算のご相談なども、お気軽にお問い合わせください。
着物の金彩変色の原因とは
箪笥の中で長く保管されていた着物に金彩の変色がよく見られます。
金の色が黒く変色している状態やオレンジ色に変色している状態、着物を畳み合わせた反対側に金彩の柄が移っている状態などさまざまです。
また、金彩の周りに緑色の緑青(ろくしょう)が見て取れる場合もあります。
このような金彩のトラブルについて解説していきます。

金彩の黒い変色について
着物の金彩が黒く変色する原因の一つに、金彩を着物に施す際に使用された膠(ニカワ)の変色が考えられます。
膠はゼラチンを主成分とした接着剤で、昔から着物の柄つけ、友禅の中や金彩の定着剤として使用されてきました。
着物の長期保管中に、湿度を多く含んだ状態が続いた場合や、防虫剤の使用により防虫剤のガスが金彩と反応し黒く変色した可能性があります。
また、金彩が取れてしまい接着剤である膠のみが生地に残ることで黒く変色した様に見てとれることもあります。
予防方法としては、年に2回の虫干しによる空気の入れ替え、除湿機等による湿気の除去、防虫剤の多種使用を行わないことです。
変色が見つかった場合は早めにご相談いただくことも着物を長持ちさせることにつながります。

金彩がオレンジ色に変色する原因
着物の金彩がオレンジ色に変色した様に見える原因は、金彩を施す際に使用された樹脂によるものです。
多くの場合、防虫剤の多種使用により樹脂が傷み金彩が剥がれたことにより見られる状態です。
オレンジ色の樹脂を触ってみて、ペタペタと粘着している場合は防虫剤が原因と考えられます。
予防・改善策としては、防虫剤の多種使用を止め、着物や箪笥からガスを抜くことが重要です。
また、アイロンを直接金彩に当てることで金彩が剥がれるケースも考えられます。
原因が判明することで、原因の除去や、樹脂の修復、再金彩加工を行い修復可能です。

金彩のベタつき原因と予防策
金彩を触ったときにベタつく場合、畳んだ反対側の生地に柄が映っている状態の原因は多くの場合、防虫剤の多種使用によるものです。
この様な場合、着物を干し防虫剤のガスを抜くことをお勧めします。
防虫剤は、人体にも害を及ばすことが考えられますので、必ず換気を行いましょう。
また、着物の染色は光に対してデリケートな物が多く、日の光が入るような明るい場所や電気の照明に近いところで長時間干すことは避けて下さい。
絶対に行ってはならないことは、クリーニングに出すことです。
ベタついている原因は樹脂が柔らかくなっているためであり、柔らかくなった樹脂をドライ溶剤で洗うと柔らかくなり、さらに柄が剥げることにつながるからです。
数日干しても変わらない場合は、粘着防止加工という方法がありますのでご相談ください。
金彩加工の修復方法(金彩加工)

金彩の修復を行う際には、まず材料として金彩が何を使用して施されているのかを考えます。
金彩に使用される金には、フィルムの金箔、樹脂を使用しての練り金、水溶性の糊を使用した練り金、光沢が鮮やかな純金代用金、銅に着色した金粉など、様々な種類があります。
また、金の変色の原因には、カビによるものや防虫剤の誤使用が多く見受けられるため、原因を推測した後、縫込みの中など見えない部分で薬品のテストを行います。
状況によっては、金彩を全て除去し、染み抜きが完了した後に金彩を施します。
金彩を除去する際は、金彩の柄だけでなく変色していない部分の金の色のデータを記録しておくなど、より元の形に近づけた修復を心がけています。

金彩加工と種類について

金彩加工は、友禅を引き立て着物を華やかに表現するための手段として用いられてきました。
現在では、金彩のみ使用された金彩友禅と呼ばれる技法による着物も製品化されています。
金彩加工は多種多様な技法が開発され、修復の工程にも多くの学びがあります。
生地が傷んでしまってこれ以上作業できないシミも、金彩加工により目立たなくすることも可能となりました。
現在の金彩加工の方法について一部ご紹介いたします。
金くくり(筒描き)

円錐形の筒紙(和紙に柿渋を塗り補強した物)または、ナイロンなどの透明で丈夫なフィルムを使用し樹脂に金粉を混ぜた物を入れて描く手法です。友禅の外側にある糸目と呼ばれる部分に金彩を加える際使用されます。

金泥筆描き

金泥とは、金箔を鱗粉状になるまで細かくした物に樹脂や膠を混ぜ込み筆描きにより柄付けする技法です。
金・銀・真鍮などの材料を使用して筆で描く技法は、濃淡をつけたり、奥行きのある立体的な金彩を加えることが出来ます。
砂子(振り金)技法

蒔絵の様に金銀が浮遊している様な表現をする際に使われる技法です。
予め生地に樹脂(接着剤)を塗り金粉を粉かく砂子状に振り落とし柄付けします。
振り落とす金粉は、竹筒に網を貼った物を使用します。
網には80〜120メッシュの使用がよく使用され、落とし刷毛でかき混ぜる様に落とします。
スタンピング技法
現在制作される多くの着物に使用される技法の一つで、耐溶剤バインダーを使用します。
小紋型などで着物に樹脂を接着し、スタンピングフィルムを圧着させることで柄付けを行います。



ピース技法
エアーブラシを用いての金彩加工です。
樹脂の中に様々な金やパールの粉等を混ぜ込み、着物に吹き付けることで柄付けを行います。

切り箔技法
着物の生地に先に樹脂を乗せ、様々な形に切った箔を貼る技法となります。
樹脂が乾く際に箔がヨレることがあり、この技法は金彩加工専門の職人によって行われる大変難しい作業です。
金駒刺繍とは
金駒刺繍(きんこましししゅう)は、着物の友禅柄や無地の部分に太い金糸・銀糸を配し、極細の糸で留め付けて模様を描く、日本の伝統的な刺繍技法です。
立体感のある豪華な仕上がりが特徴で、留袖や振袖、訪問着などの格式ある着物によく用いられます。
経年劣化による剥がれのリスク
金駒刺繍に使用される極細の留め糸は、時間の経過や保管環境の影響により劣化しやすく、刺繍が着物の生地から外れてしまうことがあります。
特に、同時期に施された刺繍は劣化の進行も揃っていることが多く、一部だけ補修しても他の箇所が着用中に外れてくるリスクがあります。

刺繍の補強をおすすめする理由
見た目には問題がないように見える箇所でも、将来的な剥がれを防ぐためには、事前の補強処置がおすすめです。
大切な着物を長く美しい状態で保つためにも、金駒刺繍の劣化が気になる方は早めのご相談をお勧めします。
よくある質問(FAQ)
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古い着物の金彩加工でも直せますか?
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はい、金彩部分の経年劣化はよくあるご相談です。生地が弱っている場合も丁寧に処理いたしますので、古いお着物でもまずは一度状態を見せてください。
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金彩が剥がれてしまったのですが、元通りに直せますか?
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はい、金彩が剥がれてしまった部分にも、模様や線に合わせて金箔や金粉を丁寧に置き直し補修いたします。元の仕上がりに近づけるよう、状態に応じて最適な方法をご提案いたします。経年劣化により金彩の色が変色している場合は、縫込みの中などを調べて残っている部分の金彩をサンプルとし出来るだけ製造当時の金彩色を復元する事を目指しています。
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金彩と刺繍、どちらも傷んでいますが同時に修復できますか?
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はい、当工房では金彩と刺繍の補正どちらにも対応しております。状態を確認し、優先順位や仕上がりスケジュールもご相談の上、同時に対応いたします。
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金彩を新たに加えることもできますか?
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はい、既存の模様を活かして金彩を追加することも可能です。ご希望のデザインやアクセントに合わせて、上品な仕上がりになるようご提案いたします。
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金彩加工はすべての着物に施せますか?
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多くの着物に対応可能ですが、生地の状態や加工の内容によっては難しい場合もあります。大切なお着物を拝見した上で、可能な範囲や注意点をご説明させていただきます。

サービス一覧
きもの工房 扇屋で主に取り扱っている着物修復サービスの一覧です。染み抜き、洗い張り、サイズ変更などお客様のご要望を伺い、お着物に最適なお手入れをご提案いたします。お気軽にお問合わせ下さい。
