【洗い張りとは】

着物の洗い張りを徹底解説・最新の技法をご紹介

洗い張りとは

着物をほどき反物状態に戻してから水洗いを行う『洗い』、水により縮んだ生地の幅を整える『張り』。この工程を合わせて『洗い張り』といいます。

近年では『張り』の作業は「湯のし」と呼ばれるものが一般的で、蒸気により熱を加え風合いをよみがえらせます。

修復を専門とする当工房での洗い張りは、一般的な「洗い張り」とは少し異なる方法で行います。

一般的には『一度だけ水洗い』をしたのち、湯のしをして作業完了となりますが、当工房では多い時で3回水洗いします。

『水洗い→染み抜き→水洗い→染み抜き→水洗い』というように、水洗いと染み抜きの作業を繰り返します。

これは生地を傷めないように状態を確認しながら少しずつシミを抜いていくためです。

「洗い張り」と「染み抜き」を行う上で重要なポイントは、洗い張りの「張り」である「湯のし」の作業を、途中に入れないことです。

湯のしは熱を加え生地を整える作業のため、しみが落ち切っていない状態で熱を加えると、染みが落ちにくくなります。

当工房では「水洗い」と「染み抜き」の工程を同じ工房内で行っているため着物の状態を見ながら繰り返し作業を行うことが可能となっています。

最近では「ママ振袖」の修復依頼も多く、染み抜き等の修復だけでなく、寸法(サイズ)を変えることが出来るため、近年需要が高まっています。

着物の修復において欠かせない大切な作業です。

洗い張りの工程

洗い張りのご相談
まず、ご希望の作業が可能かどうかの判断をさせていただきます。生地の状態を見て洗い張りが可能か、洗い張り後仕立て直すサイズの生地が縫込みの中に入っているか等、着物を解く前にご相談させていただきます。着物の中には、一部分を解いて縫込みの中を確認するケースもございます。
洗い張り
洗い張りの行程は、まず仕立て上がっている着物をほどく作業から始まります。袖・衿などのパーツを縫い合わせて反物状にし、水で洗います。
乾燥
洗い上がった着物を室内にて乾燥させます。着物の染色は光により著しく退色してしまう物があります。その為絶対に太陽の光に当てない様に乾燥させます。また、着物の中には水に濡れた状態で時間を置くと染めの色が滲んでしまうものもあるため、乾燥機を使用し急速乾燥をおこないます。
湯のし
水に入るとほとんどの着物は巾や丈が縮みます。
機械また手作業により蒸気を当てながら、風合いを整える作業を行います。
仕上げ
最後に、縫い合わせたパーツを解き、アイロンを裏から当て、仕上げていきます。
この仕上げの作業は生地の目を整え、より良い仕立の作業に繋がります。

着物を洗い張りするお勧めのタイミングとは

洗い張りを行うタイミングとして、いくつかのパターンがあります。

①身頃のサイズ変更といった大がかりな仕立て替え

②20年以上メンテナンスされていない着物の場合、袷の着物は、表生地と裏生地をつないでいる木綿の糸が先に変色してきます。同裏を確認して糸が黄色く変色している場合、いずれ表生地にシミが移ってきますので洗い張りのタイミングと言えます。また、同裏が変色している場合も洗い張りによる交換をお勧めしています。

③着物全体に出てしまったカビ。生地の黄ばみや染みの原因のひとつは、着物に生えてしまったカビです。カビは温度と湿度の条件が揃うと急速に繁殖します。着物に付いたカビは根を生やし固くなります。そうした場合には、洗い張りが有効です。

④たくさん汗をかいてしまった場合など。汗などの水性の汚れには、特に効果的です。両胸から、背中の帯下まで広範囲に汗をかかれた場合にもお勧めします。

⑤雨に濡れ仕立てが大きくくるってしまった場合は、プレスによる仕上げを行っても大きく仕立て寸法が変わってしまった場合は直すことが困難です。「染み抜き」+「洗い張り」が一番きれいに落とせます。現代の泥はねは昔の泥はねとは違い排気ガスやアスファルト等の汚れが付着してることが多いため、染み抜き後に洗い張りをするとよりきれいになります。

洗い張りをする上で注意が必要な着物について

着物の中には、通常の洗い張りを行うと友禅が滲む・金彩が無くなる等のトラブルが発生する場合があります。

例えば、アンティーク着物によく見られる、友禅の上に水溶性の顔料を使用し柄付けされた着物などは、柄が滲むことがあります。

このトラブルを防止するためには、縫込みの中など着用して見えない部分の柄で事前にテストを行います。

状況によっては、柄のデータを取った後、水溶性の顔料を全て除去して洗い張りを行い、洗い張り後にデータを元に柄の修復を行います。

これ以外にも、昔の花嫁衣装など一度限りの使用として製作された着物や、人間国宝の作品で水溶性の金彩を施されたものなど様々なケースがあります。同じようにテストを行い慎重に作業を進めます。

この様に、洗い張り前のテストやデータ保存が重要です。

近年の洗い張り事情

『洗い張りをする上で注意が必要な着物について』の項目で記載させていただいた様に柄が滲む・金彩が無くなる着物の場合、友禅の描き直しや金彩修復の技術を要します。

そのため、近年水洗いでなくドライクリーニングによる洗い張りを見かけるようになりました。

ドライクリーニングと水洗いでは、汚れの落ち方や縫い跡が残るなど風合いが異なります。

ドライクリーニングで落としきれない汚れは、水洗いすることでさらに綺麗になります。水洗いはドライクリーニングに比べ、格段に汚れを落とせます。

本来なら『洗い張りは水で洗う』ことをいいますが、近年では、柄がなくなるなどのリスクを回避するため、また手間を掛けず『ドライクリーニングで洗い張りする』業者があることは確かです。

当工房では、『水で洗う』洗い張りを行っています。

ドライ洗い張り
ドライクリーニングで洗い張りを行われた着物の縫い跡

洗い張りの歴史

洗い張りは昔から、家庭で行われることが多かった様です。

江戸時代以前の庶民は、日常的に絹の着物を着用することが少なく、綿、麻、紙に柿渋を塗って補強した物などが一般的だったといわれています。

それぞれの家庭で、着物を洗濯する光景が日常的であったことでしょう。

その時代は、多くの女性が和裁の技術を身に付けて、洗いから仕立てまで家庭内で行われることが多かった様です。

絹の着物が一般的に販売される様になった頃から、着物の洗い張りを専門とする業者が増え、現代でのクリーニング店となります。

昭和40年代を境に洗い張り業を営む店舗の数が徐々に減り始め、現在では数えられる程の業者しか残っていません。

(※写真出典『染色補正の技術・技法』より)

最新の洗い張り技法とは

洗い張りの技術も日々改良され技術の進化を遂げており、当工房では常に様々な実験を繰り返し行っています。

現在洗い張りに使用する水には、マイクロバブルやナノバブルといった極めて小さい泡を発生させた水を使用しています。この水を使用することで汚れの落ち方が格段に変わります。

これにより、樟脳の匂いや、カビの匂い等を完全に除去することも可能となりました。

下の写真はマイクロバブルといわれ、フリーラジカルという状態の泡を発生させています。

このマイクロバブルを更に細かく砕いてナノバブルを作ることが出来ます。

ナノバブルは気泡のサイズが小さすぎるため、気泡を確認することが出来ず、透明な普通の水に見えます。

マイクロバブル水

ハイブリッド洗い張りって?

洗い張りは水を使用しての作業となりますが、水洗いでは落とし切れなかった汚れについては様々な有機溶剤を使用して洗浄します。

水と有機溶剤を使用する洗い方を『ハイブリッド洗い張り』と呼びます。

着物に付いた汚れは、水溶性の物だけではありません。

勿論、洗いには洗剤も使用する為多くの汚れを除去することが出来ます。

しかし、洗いで落とし切れない強い溶解力が必要な油性系の汚れは、様々な有機溶剤を使用することで綺麗に洗浄出来ます。

当工房は、生地の状態を見ながら徹底的に洗浄を行っております。

洗い張り料金

※表生地のみの洗張り・生地の状態・解き難・カビによる洗い等、お着物により価格が変わることがございます。

お着物を見て、詳しいお見積りを出させていただきます。お見積もりは無料ですのでお気軽にご相談下さい。

洗い張り料金料金(消費税込み)

振袖
振袖総絞り
22,000円
28,600円

留袖・色留袖
20,350円

訪問着・付下げ

大島・結城
20,350円

道行 ・ 長コート
喪服
19,800円

無地・小紋・紬

長羽織・羽織・長襦袢

19,250円
*振袖用襦袢は19,800円
                      

その他


・刺繍や柄合わせの多いお着物、総絞りのお着物については、追加料金がかかる場合があります。
・生地の状態、解き難・カビによる下洗いの有無等、お着物により価格が変わる事があります。
・染み抜き代は別途となります。
・お着物を見て、詳しいお見積りを
出させて頂きますので、お気軽にご相談下さい。
※解き代・八掛・胴裏別途
洗い張り料金表

サービス一覧

きもの工房 扇屋で主に取り扱っている着物修復サービスの一覧です。染み抜き、洗い張り、サイズ変更などお客様のご要望を伺い、お着物に最適なお手入れをご提案いたします。お気軽にお問合わせ下さい。