【染め替え】
着物は染め替えにより色を変えることが可能です。
染め替えは、派手になった着物を落ち着いた色に染め直すなど昔からある手法です。
しかし、着物を綺麗に染め上げるにはいくつかの注意点があります。
今まで数多く染め替えを行ってきた経験から説明いたします。
染め替えとは
着物の染め替えはどの様な作業なのかご説明いたします。
① 一番多い事例は、薄い色から濃い色に変える染め替えです。
現在の地色の上に色を加える様な染め方で、『色掛け』と呼ばれる作業となります。
② 上記の①とは逆に、濃い色から薄い色への染め替えです。まず地色を白く抜いてから染める『色抜き・色掛け』と呼ばれる作業です。
③ この他、地色を変更する際、柄を染めずに地色を変えたい場合は、柄をマスキングしてから染める『柄伏せ・色掛け』をして染める方法があります。
④ 無地から『小紋染め』に変える事も染め替えと言います。
『色掛け』による染め替えを綺麗に染め上げるには
着物の地色を濃く染める色掛けには、『丸染め』と呼ばれる仕立て上がった状態で染める方法と、着物を『反物状態に戻してから染める』方法があります。
それぞれのメリットとデメリットについて紹介します。
『丸染め』メリット・デメリット
○メリット
・着物を解かずに仕立て上りの状態で染めるため、洗い張り代金に加え、仕立て代金が不要で、低予算で染め替えることができる。
✖️デメリット
・丸染め後、着物を解くと縫込みの中と色の違いができるため、今後袖の裄を出す事やサイズを広げると染めムラができる。
・生地が弱っていると生地が破損する可能性がある。
『反物状態に戻してから染める』メリット・デメリット
○メリット
・洗い張りを行ってから染める為、清潔で染めムラができ難い。
・サイズ変更や今後洗い張りすることも可能。
✖️デメリット
・洗い張り代金、仕立て代金がかかるため料金が高い。
『丸染め』は『反物状態に戻してから染める』方法と比べて料金の面でメリットが大きいですが、仕上がりに不安があります。
きもの工房 扇屋では、染め難が発生する可能性があるため、現在丸染めの取り扱いを行っておりません。
なお、このどちらの方法で『色掛け』を行っても、地色の上に色掛けを行うため多少の誤差が生じ、色見本と完全に同色に染め上げることは困難です。
このことをご理解頂いた上で、染め上がりを楽しみに待つのも色掛けの楽しみの一つです。
『色抜き・色掛け』の染め替えには要注意!
上の写真の様にシミが多く出ている場合には色抜きを行っての染め替えがお勧めです。
生地が丈夫な場合のみこの方法での染め替えが可能です。
濃い色から薄い色への染め替え『色抜き・色掛け』は着物の状態によりお勧めできない事があります。
着物の濃い地色を抜くためには、ハイドロサルファイト等の薬品を使用し、下抜きを行います。
その後、漂白剤を使用し本抜きを行い白抜きと呼ばれる作業が完了します。
リンズの様に光沢のある生地は傷ができる事が多くお勧めしません。
この工程は、生地が薬品に耐えられるのであれば可能ですが、縫紋の跡など小さい穴が空いている場合生地が破れる事があります。また、黒留袖など完全に抜き切れない着物もあります。
保管状態にもよりますが、製造されてから30年を超えるような着物は注意が必要です。
新しい着物であっても、染め上がりの生地が薄くなったと感じられることが多いです。
作業として可能であっても、生地の破損や生地を弱らせる可能性があることをご理解下さい。
『柄伏せ・色掛け』の染め替えについて
友禅など柄の色は変えずに地色だけを変える方法として、『柄伏せ・色掛け』の作業があります。
柄伏せは手作業でマスキングを行う為、柄の繊細さにより作業代金が変わってきます。
また、柄伏せを行っても濃い地色の染めの場合多少色が入り込む場合があります。
この時は、友禅の修復も一部必要となる可能性があります。
『色掛け』と比べ、工程は似ていますがコストの面では高くなります。
『小紋染め』と『無地染め』
今まで説明してきた染めの方法は『無地染め』と呼ばれる単色の色掛けですが、
着物全体にシミがあり染み抜きが高額になる場合は『小紋染め』を行う事でシミを隠すことも可能です。
シミを抜かずに小紋柄を入れる為、よく見るとシミが見える事は有りますが無地染と比べると、目立たない仕上がりが期待できます。
また、鮫小紋の様な柄に少し濃い色の無地染を行うと、小紋柄は目立たなくなり、見方によっては無地染めの様になる場合があります。
なお、無地染めに関しては、シミがあると染めムラとなって出てくるため、ある程度シミ抜きをしてからの染め替えをお勧めしています。
サービス一覧
きもの工房 扇屋で主に取り扱っている着物修復サービスの一覧です。染み抜き、洗い張り、サイズ変更などお客様のご要望を伺い、お着物に最適なお手入れをご提案いたします。お気軽にお問合わせ下さい。